どちらかというと専門家向けの文献紹介(行動分析学中心)
行動分析学を学ぼうとしている方よりは、すでに学んでいる方向けの文献紹介ページです。カテゴリなどを整理して紹介できるとよいのですが、とりあえずその時々で関心がある論文を読みながら、気が向いた時に時間があったら紹介していますので順序などは何も脈絡がありません。行動分析学とは関係ない論文もあるかもしれません。整理されていませんが、大きく分けて①概論的論文と、②実践的論文があります。ネット上で無料で公開されている論文にはリンクを貼ってあります。
1)日本語論文
- 仁藤二郎・奥田健次(2013)嘔吐不安を訴えるひきこもり男性の食事行動への介入-エクスポージャーにおける行動アセスメントと介入の評価-
- 奥田健次(2006)不登校を示した高機能広汎性発達障害児への登校支援のための行動コンサルテーションの効果 : トークン・エコノミー法と強化基準変更法を使った登校支援プログラム.
- 山本淳一・澁谷尚樹(2009)エビデンスにもとづいた発達障害支援 : 応用行動分析学の貢献.
- 中野良顯(1996)応用行動分析とサイエンティスト・プラクティショナー・モデル. 行動分析学研究, 9, 172-177. (解説)「実践研究の方法と課題」という公開講座にて発表された内容を論文として起こした文章だと思います。1949年に提唱されたサイエンティスト・プラクティショナーモデルに対して、行動分析学からの回答として、Baer, Wolf, & Risley, (1968) の論文の要約が掲載されています。そして2004年の論文(下記に紹介している中野, 2004)へと繋がります。
- 中野良顯(2004)行動倫理学の確立に向けて : EST時代の行動分析の倫理. 行動分析学研究, 19, 18-51. (解説)ページ数が示す通り、超長編展望論文です。EST(経験的に指示された治療法:Empirically Supported Treatments)やEBM(エビデンスに基づく医療:Evidence-based medicine)がどのように展開していったのかについて、これまで調べた論文(海外の論文も含めて)の中で最も詳しく、そしてわかりやすく説明されています。
2)英語論文
- Kazdin, A. E. (2019). Single-case experimental designs. Evaluating interventions in research and clinical practice.
- Altman, K., Grahs, C., & Friman, P. (1982). Treatment of unobserved trichotillomania by attention-reflection and punishment of an apparent covariant.
- Baer, D. M., Wolf, M. M., & Risley, 1968. Some current dimension of applied behavior analysis. Journal of Applied Behavior Analysis, 1, 91-97.(解説)Journal of Applied Behavior Analysisが創刊され、その第1巻に収録された超有名な論文。応用行動分析学について7つの基準を設けて概説しています。20年後にも見直しが行われてほぼ同じタイトルの論文が刊行されていますが、こちらでは「social validity(社会的妥当性)」が基準の一部に含まれました。7つの基準を満たしながら実践を続けることは非常に困難ですが、それを目指して実践を続けていきたいです。
- The Columban Simulation Project(解説)The Columban Simulation Projectとは、B. F. Skinnerと、Skinnerのお弟子さんの1人であるEpsteinらによって行われた一連の研究です。Computer simulation project と対比させた形で、ハトの学名(Columba liviaなど様々な分類があるようですが、詳細は把握していません)をもじってSkinnerが名付けたようです。
- Allen, K. D., & Evans, J. H. (2001). Exposure-based treatment to control excessive blood glucose monitoring. Journal of applied behavior analysis, 34, 497–500. (解説) Ⅰ型糖尿病のためインスリンが分泌されず注射で補う必要があるという15歳の女子が対象。血糖値を一定レベルに保つために、1日6〜12回、試験片(test strip)に血を採ってチェックすることを勧められている。ところが、血糖値が下がりすぎると意識を失う危険性があり、それを避けるために毎日90回近くチェックしてしまう。そして親は試験片の購入のために週に600ドルの支出をしている。そのような状況で、過剰なチェックをやめるための介入。両親が設定したチェック回数の上限を下回ることが目標。上限を超えると1回分のstripがもらうためには(つまりチェックするためには)30分のお手伝いをしなければならないというルール(反応コスト)。しかも上限を超える分は多くても5枚(もしくは条件によっては2枚)までと決められている。お手本のような基準変更デザインであり、また直接観察ではなくパフォーマンスを記録したことも画期的。
- Porritt, M., Burt, A., & Poling, A. (2006). Increasing fiction writers’ productivity through an Internet-based intervention.
-
Love, S. R., Matson, J. L., & West, D. (1990). Mothers as effective therapists for autistic children’s phobias. Journal of Applied Behavior Analysis, 23(3), 379–385. (解説)入り口のドアを閉めた状態では1人で庭に出られない(新聞をとってくることができない)4.5歳男児と、シャワーへの恐怖反応を示しシャワーが使えない6歳男児(2人とも自閉症の診断)に対して、それぞれ両親がセラピスト役となって、モデリングとプロンプトとフィードバック、段階的エクスポージャーによって介入を行った実践報告。週3日、1日約3回(つまり週9回程度)のエクスポージャーセッションが実施された。強化子としては、言語的賞賛+好きなキャラクターのステッカーが両方の児童に。一方にはそれに加えておもちゃなどが与えられた。指標は3つの従属変数(達成したステップ数、発声を伴う恐怖反応、全体的恐怖反応の5段階評価)を学生が2人で測定した(おそらく全てのセッションで現場に行った)。結果はどちらも標的行動を達成できるようになっているが、現代においては庭に出られない子は問題にならないかもしれない。問題になっている行動は異なるし、標的行動も異なるが、こうすればマルチベースラインが組めるという参考になる。