企業訪問をした際、担当者から受けたご相談内容について、「従業員のマネジメント編」としてご紹介します。なお、この記事では、管理者の中に、現場の主任、リーダー、班長などを含めています。
質問1:管理者には、どんな人を選べばよいか?
このような相談は、多くの企業や事業所からあります。大抵の場合、企業の人事部門で評価した従業員を、昇進させたところ、管理者としてはうまく機能しないので、本人や周囲が困っているという内容です。職場や業種によって異なるため一概には言えませんが、業務遂行能力と、管理者に求められる能力(マネジメント能力)は、異なります。
私たちは、まず、管理者に求められる能力や、企業が評価するポイントを整理し明確にします。例えば、以下のような項目を書き出します。
(1)ある程度の業務を1人で行うことができる(業務遂行能力)。
(2)自分で仕事を見つけたり、動くことができる(自発性、積極性)。
(3)他の従業員に指導したり、新人教育をすることができる(マネジメント能力①)。
(4)指導や教育だけではなく、他の人が実行した業務について評価しフィードバックできる(マネジメント能力②)。
(5)特に、マネジメント能力②については、「ありがとう」「助かります」など、ポジティブな声かけを中心にできる。
その上で、管理者を選ぶ際の評価基準として利用したり、管理者に、上記の項目を満たすよう努力してほしいと明確に伝えたりしていきます。
質問2:管理者になるのを固辞する人が多くて困っている
このような困りごとも多く寄せられる相談の一つです。昇進を固辞する人の中には、職人のような人がいて、「一人で作業をすること、ものづくりをすること」が喜びで、それを崩したくないという方がいます。また、管理者に『なるだけ損』という雰囲気が醸成されてしまっている場合も少なくありません。そのような場合には、まず、管理者に求められる業務について焦点をあててみましょう。例えば、以下のような項目です。
(1)一般職と同様に、自分の業務
(2)加えて、管理業務(シフト調整など)
(3)他の従業員の指導、新人教育
(4)会議への参加
(5)緊急時の対応
(6)他の従業員の業務のフォロー(クレームや緊急対応、ミスの処理)
(7)業務が多いが、残業時間は増やさないよう言われる(あるいは、管理者には残業手当がつかない規則)
(8)中間管理職の場合には、上司と部下の関係調整(板挟み)
書き出した上で、どの項目の比重が大きいのかを考えてください。ある企業では、管理者になっても、(1)のそれまでの業務は一切減らないうえに、(2)以降の管理業務は求められ、さらに長時間の残業にも「管理職手当」だけでごまかされてしまうという事実が判明しました。
このような状況で、どのような対策を立てることができるでしょうか。
対策
これまでの訪問では、次のような対策を行うことで、状況が改善したことがありました。
・管理職が管理業務に専念できるよう補佐の管理職(主任補佐、サブリーダー、副班長など)を設ける。
・他の従業員の指導、新人教育の時間を予め確保したり、教育専門の従業員を配置する。
・人事の評価基準を明確にする(頑張っている人・結果を出す人が報われるシステム)。
・管理職のさらに上長が、現場の意見を吸い上げたり、ねぎらいの声をかける。
・管理者手当の金額を見直す。
各事業所や職場の状況に応じて対策は異なりますが、こういった対策を事前に講じ、メンタルヘルス不調者を出さないための『予防的視点』が重要です。