専門家や保護者にかかわらず行動分析学を学ぼうとしている方に向けた書籍紹介

1)行動分析学入門

・杉山尚子 (2005) 行動分析学入門-ヒトの行動の思いがけない理由 集英社
・杉山尚子・島宗理・佐藤方哉・R.W.マロット・M.E.マロット(1998)行動分析学入門 産業図書

行動分析学入門というタイトルの本は2種類あります。1冊目は1998年に産業図書から出版されたもの(写真大きい方)。2冊目は2005年に集英社新書から出版されたもの(写真小さい方)。1冊目の共著者である杉山尚子先生が、さらに手軽に読めるように、また引用文献などを見直して書き下ろしたのが2冊目になります。

これから行動分析学を学ぼうとされている方は、自閉症の子の保護者でも、組織の行動マネジメントに興味がある方でも、学生でも、この2冊は手元に置いておく必要があります。私自身、行動分析学を完全に理解しているわけではないので、わからないこと、説明できないことがあると手にとって該当する章を見直すことの繰り返しです。

海外では人気の本は時間経過とともに改訂版が出版されるのが一般的だと思います。著者の杉山先生や島宗先生によると、引用文献を見直したり、説明文中の事例を見直したりするとかしないとか。はたしてこれらの本に改訂はあるのでしょうか。

2) ワードマップ応用行動分析学

島宗理(2019)ワードマップ応用行動分析学 –ヒューマンサービスを改善する行動科学 新曜社

タイトル通り、応用行動分析学について網羅的に書かれています。ある一分野に特化した内容ではないので、幅広く応用行動分析学の全体像を掴みたい方や、応用行動分析学に基づいて実践を行なっている専門家向けです。脚注だけでも相当な情報量で、一旦脚注に目をやってしまうと(面白すぎて)本文に戻れなくなることもあります。

書籍の紹介については、行動分析学会の〈ニューズレター2019年夏号〉に島宗先生ご自身の秀逸な書籍解説があります。

3) リーダーのための行動分析学入門

島宗理(2015)リーダーのための行動分析学入門 日本実業出版社

行動分析学入門というタイトルですが、「リーダーのための」ということばが表しているように、組織の中で行動分析学を活用するための本です。あるいは、組織やそこに務める従業員を「ポジティブ」にしていくために必要な‥‥うまく言い表せませんが、とても奥が深い本です。内容は「リーダーシップは才能や人柄ではありません。テクノロジーなのです(p.142)」という一文に代表されるように、今までの産業界の常識を覆すような内容です。一方、組織の事例やCLGというアメリカのコンサルティング企業の戦略を紹介しながらも、やはり行動分析学の入門書となっており、組織行動マネジメントにかかわっている方からそうでない方まで、行動分析学の神髄を学べる良書です。

一部ご紹介しますと、

「リーダーが成功するかどうかは、部下にとって何が好子として機能するか、何が嫌子として機能するかを知り、それが…(中略)個人差があることを理解しながら、増やしたい行動に好子を随伴させる方法を工夫していくことにつきるのです(p.123-124)。」という記述は、そのまま子育てや臨床にもあてはまりそうです。

さすがに子育てで悩んでいる方にこの本を読んでくださいとは言いませんが、行動分析学を学んでいる方は先に挙げている入門書と交互に本書を手に取ると、同じことが別の視点で紹介されていたり、他の入門書にはない新しい視点で書かれていたりして勉強になること間違いなしです。