主訴親以外の大人と会話した場面を見たことがない年中女児のことを心配した母親が来談

まずは、状況の整理をしたところ・・

状況①:保育所では、ほかの児童に対してわずかに発話があるようですが、保育士が近づくとやめてしまうため、はっきりとは確認できませんでした。保育士など大人に対しては、発話はほとんどなく、あっても小声でした。

状況②:登園や降園時の園庭遊びの時間には、保育士のそばから離れず、他の児童とは遊ぶことができませんでした。園庭では、母親と2人になれば発話が可能でしたが、母親が一緒にいても、保育士や他の児童には発話できませんでした。「おはようございます」「さようなら」などのあいさつも一切反応がありませんでした。

状況③:一方、家庭においては、兄と一緒に歌を歌ったり、大声で楽しそうに動き回ったりしていました。家族と出かけた先では、家族以外の他者から注目をされていなければ、家族と同様に会話ができるとのことでした。

このような状況で、母親には、「家族や一部の園児に対して生起している発話が、それ以外の他者に対しては生起していない」「発話以外の行動(例えば、保育士の手をひっぱるなど)が、他者のサポートによって維持されており、他者の存在はむしろ発話行動を抑制している」ということをお伝えしました。そして、毎日通園している保育所において実施できる対応策について具体的に話し合いました。

内容は、保育士や母親の関り方を見直すものでした。そして、話し合った内容を、保育士と母親が生活場面において実行しました。

取り組んだ結果取り組む前は、保育所内でほとんど発話ができず、発話があっても、大人がいない場面に限定されていました。しかし、取り組んだ後は、体調不良で欠席した日と直後の日を除いて、ほぼ毎日何らかの場面で発話が確認されました。その後、短期間のうちにあいさつを除いて、自由に話せるようになり、場面緘黙は解消しました。年長時に行ったフォローアップ面接では、あいさつも言えるようになったことが報告されました。