【社交不安症の一例】
明美さん(仮称)は、友人がいて、ペーパーテストの成績も良く、人前で緊張しやすい自覚はありましたが、学生時代は大きな問題もなく過ごし、大学を卒業後は地元の企業に就職しました。
仕事でも大きな問題はなかったのですが、進行状況の報告や、初めて取り組む業務についての相談など、仕事をするためのコミュニケーションをもっと増やすようにと、上司から指摘されることがありました。明美さんは皆が忙しい中で気を遣いながらも必要な事はやっているつもりだったので、これ以上どうしたらいいのかと悩みました。また、この会社では月に1回、社長が頑張った人を表彰する習慣がありました。表彰されて皆からすごいと思われるのは羨ましいなと思いつつも、表彰される人は全員が注目する中で社長から金一封を受け取り、挨拶をしなければならないため、選ばれたくないとも思っていました。
そして、何より明美さんが苦手としていたのは、会議や表彰の場など、集団の前で発言することでした。会議では自分からは発言はせずに、会議後の会話の中で意思表示をしたり、必要なことを個別に伝えたりしていました。会議中に発言を求められたときには、頭の中が真っ白になり、声も震えている感じがしました。最初は慣れの問題とも思っていました。そのため、事前に話すことを準備して練習したり、「大丈夫、できる」と自分に言い聞かせるようにしました。しかし、「でも…想定外のことを言われたらどうしよう」「私の発言にほかの人はどう思うんだろう…」と、さらに心配が強まり、準備に費やす時間が増えていきました。会議が近づくにつれて、ドキドキして、口が乾き、緊張していきました。自分が発言しても、発言しなくても、「周囲は自分のことをどう思っているのだろう?」と不安になりました。いつの間にか、慣れるどころか、どんどん人前で話すことへの苦手意識が強くなっていきました。
そんなある日、同期が新しい企画のプレゼンを任されました。上司からは「今度は山中さんにもプレゼンを任せるから、もっと積極的に頑張ってね」と言われました。「とてもじゃないけれど、今の自分には人前でプレゼンをやり切ることはできない」と思い、今後の仕事への影響を考えカウンセリングを希望されました。
この事例以外にも以下のような事でお困りではないでしょうか?
・授業中、先生から当てられて、回答することや音読することが苦手。
・人前で自己紹介するだけでも頭の中が真っ白になってしまう。
・たくさんの人が注目する状況で、プレゼンや発表をすることが苦手。
・他の人がいるところで電話をするのは苦手。
・店員さんとの会話が苦手で極力避ける。服を買う時はネットショップを利用している。
・人が見ている状況で、問題を解いたり、仕事をしたりするのはとても緊張する。
・職場の人、友人の集まりなどで食事をすることが苦手。
・忙しいそうにしている仕事仲間や、店員に声をかけることは苦手。
【それはもしかしたら社交不安症かもしれません】
社交不安症は不安症の一つです。
人から注目される場面などで、「(相手から)どう思われているのだろうか?」と強く不安に感じ、そのような場面を避けたり、不安を和らげるための行為をしたりすることで日々の生活に支障が出てしまう精神疾患の一つです。
不安になる場面を避けたり、不安を和らげる工夫をしているにもかかわらず、ますます強く不安を感じるようになります。そして、不安が高まると動悸や赤面、手足や声の震え、冷や汗、頭が真っ白になる感覚、吐き気や腹痛、下痢などの身体症状が出現することもあります。
そのため、本来ならばできることが、人前だとできなくなり社会的な場面で力を発揮することが難しくなります。
【社交不安症を改善するためのヒント】
REONカウンセリングでは、まずは、生活の中で、不安に感じる場面を中心に、細かく整理していくことから始めます。
クライエントと不安場面を整理するときに、「会議での発言が苦手で避けている」、「人前で自己紹介をするのが苦手」、といった目立つ不安を回避する行為はすぐに整理できることが多いです。一方で、生活の中で当たり前にやってしまっている回避に気づいていないことがあります。例えば、「飲食店では一番人目につかないところに座る」「不快な思いをさせたかもしれない…と思った相手に話しかけて機嫌を確認する」「スマホを見るふりをして人から話しかけられることを避ける」「常にきちんとした服装で外出する」といった回避行為です。長年そのように過ごしてきたため、自分では気づけないことがあります。このように生活の中の回避行為をいかに見つけるかがとても重要です。
REONカウンセリングにご相談に来られる社交不安症の方のなかには、仕事をしているものの、日々の仕事で社交不安による負担を感じていたり、転職を繰り返している方が少なくありません。
「騙し騙しやれば、なんとか仕事はできるし、いざとなれば転職すれば…」と今までは考えていたけれども、「社交不安を治して少しでも負担を減らしたり、人からの評価を気にしすぎず仕事に取り組みたい」という方は、継続的に心理治療に取り組むことをおすすめします。