人を轢いた・ぶつかったかもしれない不安
〜加害強迫と確認行為〜

車を運転したあとに「人を轢いたかもしれない」「誰かにぶつかったかもしれない」と不安になり、何度も現場を確認したり、警察やニュースを確認したくなることがあります。

歩いているときにも、「人にぶつかったかもしれない」「誰かを突き飛ばしてしまったかもしれない」と心配になり、頭から離れなくなることはありませんか?

その不安が繰り返し起こり、確認しても安心が長続きしない場合、強迫性障害(強迫症)の一つである「加害強迫」や「確認強迫」として整理できることがあります。

【事例】加害強迫の悪循環(吉本さんの場合)

吉本さん(仮称)は専業主婦でした。元々、人に迷惑をかけてはいけないと細やかに気を配るところがありましたが、家事や育児をこなしながら充実した日々を過ごしていました。

ある日、スーパーへ車で買い物に行く途中、人通りの多い道を左折しました。その時、車がガタンと音を立てて少し揺れたため、「人にぶつかってしまったかもしれない」と少しドキッとした気持ちになりました。
すぐに車を降りてケガをした人がいないか確認しましたが、何もなかったため、車に戻り運転を再開しました。

【不安と確認のエスカレート】

その日を境に、車を運転している時に「人を轢いたかもしれない」と気になり、その度に車を停めて確認することや、もう一度同じ道を走って確認することが増えました。

歩行者や自転車の横を通ると「ぶつかって突き飛ばしたかもしれない」と心配になり、さらには、誰もいなくても「自分が見落としているだけで本当は人がいて轢いたのかもしれない」と考えるようになりました。

さらに悪いことに、車を運転している時だけでなく、歩いていても「人にぶつかり道路に突き飛ばして怪我をさせてしまったかもしれない」と、確認する場面は増えていきました。

その結果、吉本さんは常に心配なことを浮かべては確認をしているので、一日のほとんどを確認に費やすようになりました。
何度も現場へ確認に戻ったり、帰宅して家族に確認をお願いしたり、運転していた時刻に事故が起こっていないかを、警察に電話をしたり翌日のニュースで確認するのです。

確認に時間がかかるため、車の運転は近場のみとなり、車以外の外出も人混みを避けて、最低限必要な時にしかできなくなっていきました。学校行事に参加できなくなり、ママ友との付き合いも断ることが続き、子育てへの影響を心配して相談に来られました。

このような確認行為はありませんか?

加害強迫では、「人に迷惑をかけたかもしれない」「誰かを傷つけたかもしれない」という不安から、以下のような確認や回避が増えることがあります。

  • ・コンロの火を消し忘れて家が火事になり、迷惑をかけてしまうかもしれないと思い、何度も火が消えているかの確認をする。
  • ・自分が感染症にかかっていて人にうつしてしまうのではないかと気になり、過剰に消毒をしたり人との交流を避けたりする。
  • ・料理中に包丁が滑って家族に怪我をさせてしまうかもしれないと思い、人がいるときに包丁を使えず、キッチンにも入れない。
  • ・かばんのボールペンが人に刺さって怪我をさせるかもしれないと思い、細長いものや尖ったものが持ち歩けない。
  • ・電車に乗ると痴漢をしてしまったかもしれないと思うため、電車に乗ることができない。
  • ・作成した書類が間違っていて会社に大きな損害を与えるかもしれないと思い、必要以上にミスがないか確認してしまう。
  • ・周囲の人に、事故が起きていないか、火が消えているか等の確認を必要以上にする。「大丈夫」と言ってもらわないと気が済まない。

強迫性障害・加害強迫とは?

加害強迫とは、「自分が誰かを傷つけたかもしれない」「重大な事故や迷惑を起こしたかもしれない」という不安が繰り返し浮かび、確認や回避がやめにくくなる強迫性障害(強迫症)の一つです。

強迫症とは、一般的には「心配や不安が頭から離れず生活に支障が出ている状態で、ある儀式行為(確認など)をすると一時的に不安が消えるため、その行為を繰り返してしまう」疾患です。
儀式が数十分から数時間と長くなったり、一日何回も繰り返したりすることで、行為自体が苦痛になります。重度の方では家から出られなくなったり、一日中寝て過ごすこともあります。

強迫行為をすると一時的には安心しますが、その安心は長続きしません。
日常生活を送る中で、外に出れば「人を傷つけたかもしれない」と確認したくなる場面は避けられず、結果として確認行為はどんどん増えていきます。頭の中で気になる場面を思い出し、何度も確認(反芻)を繰り返す人もいます。

▼ 強迫症について詳しく読む

 強迫症とは|改善のための行動療法と支援

加害強迫を改善するためのヒント

REONカウンセリングでは、まずは「生活の中で繰り返されている強迫行為(確認や回避)」を細かく整理していくことから始めます。

「車で轢いたかどうかの確認をする」「火を消したかどうかの確認をする」といった目立つ行為はすぐに整理ができることが多いです。
一方で、生活の中には自分ではいつの間にか“自然に”“当たり前に”やっている強迫行為が潜んでいることがほとんどです。

例えば、「不安にならないように、人通りの多い道を車で走ることを避ける(回避する)」という行動には、自分ではなかなか気づけません。こういった無意識の回避行動や確認行為を専門家と見つけて整理することが、改善への第一歩となります。

ご家族への「巻き込み」について

強迫症にお困りの方の中には、不安のあまり家族に強迫行為を手伝ってもらっている方がいます。これを心理学の用語で「巻き込み」と言います。

家族からすれば、本人の「しんどさ」を少しでも軽減させてあげたいと考え、確認に付き合ってあげているのですが、実はこの「巻き込み」が、症状を維持させたり悪化させてしまう原因になります。

本人だけでは強迫行為をやめられない場合、ご家族が一緒にカウンセリングに参加することがとても重要です。

  • 現在の「巻き込み」の状況を整理する
  • 本人が強迫行為をしている時の、家族の適切な対応(声掛けや態度など)
  • 「見てきてくれない?」「大丈夫だよね?」と確認を求められた時の返し方
  • 本人が改善に取り組む際のサポート方法

これらについて、具体的に話し合っていきます。

よくあるご質問

Q.人を轢いたかもしれない不安は強迫症ですか?

A. 確認が「繰り返され、安心できない」場合は強迫症の可能性があります。
実際に事故が起きたかどうかの確認が必要な場面もあります。ただし、何度確認しても安心できず、現場確認、ニュース確認、警察への確認、家族への確認が繰り返され、生活に支障が出ている場合には、強迫症(加害強迫・確認強迫)として整理できることがあります。

Q.家族に「大丈夫だった?」と聞くのはよくないですか?

A. 長期的に見ると、不安を維持・悪化させる原因になることがあります。
家族に確認して安心を得る(巻き込み)ことは、一時的には楽になりますが、結果として確認行為をやめられなくなります。本人と家族で、確認要求にどのように対応していくかを整理することが大切です。

Q.加害強迫はカウンセリングで改善できますか?

A. はい、改善は十分に目指せます。
REONカウンセリングでは、無意識に行っている確認行為や回避行動を整理し、行動療法的な支援を行います。

当室で強迫症に関する相談をされた方の感想を掲載しています。
相談を検討されている方は、参考としてご覧ください。

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この記事の執筆・監修者

仁藤 二郎(REONカウンセリング 代表)

公認心理師 / 臨床心理士 / 専門行動療法士


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